任侠ファンタジー(?)小説・光と笑顔の新たな世界 短編 その6-6


一騒動(6)

真子を背負った真北と、まさちん、えいぞう、そして、健がロープウェイ乗り場へやって来た。
先に乗り場に来ていた、くまはちが、真北たちに気付き、顔を上げる。同じようにそこで待っていたぺんこうも、顔を上げた。

「眠られたんですね」

そう言って、くまはちが自分の上着を真子の肩に掛けようとしたが、ぺんこうに先を越されてしまう。

「下に降りたら、そのまま帰ります」

ぺんこうが、真北に言った。

「真子ちゃんが起きてからにしろ」
「いいえ。組長には何も言わずに…」
「伝言も無いのか?」

真北の言葉に、ぺんこうは暫し考える。

「残りの休日、堪能下さい…」
「それって、あれか? あと二日、休んでもええって事か?」
「そうしてください」

ちょっぴり意地悪っぽく言った真北に、ぺんこうは、冷たく応えた。
ロープウェイが到着した。頂上へやって来た客が降りていく。そして、待機していた客が、それに乗り込んだ。
降りた客の中に、真北の仕事仲間が居た。
真北は、目配せをし、少し離れた所で待機している他の刑事に目で語る。

あとは、よろしく。

真北は真子を背負ったままロープウェイに乗り込んだ。
ドアが閉まり、発車する。

わっ!

真北は、目に入った景色が急に遠ざかった事で、心拍が高鳴り、目をギュッと瞑った。

「代わりますよ」

ぺんこうが、そっと告げた。

「いや、いい」

真北は短く応える。

「…あっ…」
「えっ? …わっ!!」

ぺんこうが発した言葉に反応して、真北は思わず目を開けた。しかし、目の前の景色は……。

「…大丈夫ですか?」

ぺんこうが、そっと尋ねると、真北は、首を縦に振るだけだった。
ぺんこうの口元が、ちょっぴりつり上がる。
それは、悪戯っ子のように…。



二人の様子を観ていた、まさちんたち。

「やっぱり、あかんやん」

健が、そっと言った。

「あの勢いは、なんやったんやろ」

えいぞうが呟くと、

「…単なる、勢いやったんやろな」

くまはちが、フッと息を吐きながら応えた。

「……真北さんって、もしかして…」

やはり、鈍いまさちん。今頃になって、気が付いたらしい。

「遅すぎやで…」

くまはちたちは、項垂れた。




真子達が泊まっている旅館の駐車場に、ぺんこう、まさちん、くまはち、そして、えいぞうと健の姿があった。
真子と真北は、部屋に居た。
真子は旅館に戻っても、眠り続けていた。真北は、心配げな表情で、真子の側に座り込み、真子の頭を優しく撫でていた。


ぺんこうが、車のキーをポケットから取り出す。キーロックを外そうとした途端、キーをくまはちに取り上げられた。

「まさちんが運転しろ」

くまはちが言うと、

「いや、この車は……」

ぺんこうの車は、ぺんこうが運転する。そうじゃないと、ぺんこうが激怒する…。
だからこそ、まさちんは躊躇っていた。

「ええから、運転しろっ」

キーロックを外し、運転席のドアを開けたくまはちは、まさちんをそこに押し込んだ。そして、ぺんこうを後部座席に押し込み、えいぞうに目をやった。

「さっさと戻って、仕事しとけ。あとは、任せろ」

えいぞうは、くまはちが何も言わないのに、そう応えた。
が、

「……ほんま、ええ加減にせぇよ。再度同じ事したら、
 戻ってきた時、俺…何するか、解らんで…」

ドスを利かせて応えてから、くまはちは、後部座席に乗り込んだ。
まさちん運転の車が、旅館を後にする。えいぞうと健は、車が見えなくなるまで見送っていた。

「あとは…真北さんに任せとけば、ええやろ」

そう言って、真子達の部屋の方を見つめた。

「兄貴、どうする?」
「……そうやな……」

えいぞうは、暫く考え込んでいた。

「あいつらが来る前の状態で、ええやろ」
「ほな、切り替えるで」
「あぁ」

そっと応えたえいぞうは、フッと息を吐く。

「行くで」
「はいなぁ!」

えいぞうと健は、旅館を背に歩き出す。
紅葉に覆われた道を、二人はゆっくりと歩いて去っていった。





まさちん運転の車は、温泉街を通り過ぎ、山道を走り出した。暫く走ると、高速の入り口に差し掛かった。スゥッと通り過ぎ、スピードを上げて、本線へと合流する。
まさちんは、ルームミラーで後部座席の様子を伺った。
運転席の後ろに座っているぺんこうは、窓の外を眺めていた。その隣に座るくまはちは、ぺんこうと反対側の外を眺めていた。
くまはちが、フッと息を吐き、突然、ぺんこうの左腕を掴み上げた。

「…やっぱり、腫れとるな」

ぺんこうの左手の平は、赤く腫れ上がっていた。

「ほっとけ」
「しかし、驚いたよな。真北さんの行動」

くまはちが、そっと言うと、

「知るかっ」

ぺんこうは、冷たく応えて、くまはちの手を振り解こうと腕を動かしたが、くまはちが握りしめる力の方が勝っていた。

「これでも握っとけ」

くまはちは、自分の鞄から何かを取りだし、ぺんこうの手に握らせた。

「…!??…!!! これ…」
「ん? あの体勢から考えられた事やから、もらっといた」
「…そうか。…ありがとな」

ぺんこうの言葉を聞いた途端、くまはちは、手を離した。
ぺんこうの手には、冷却剤が握りしめられていた。

「右手は大丈夫か?」
「あぁ」
「他に痛めた所は、無いか? 後からくるだろ」
「俺は大丈夫や。……組長の腕……あざになってるはずだ…」
「その辺りは、真北さんに任せとけば、ええって。お前は
 いつもの自分に戻っておけよ。組長が心配するからな」
「解ってる。…いつも……すまんな」
「気にするな」
「……落ち込むよな…」

ぺんこうが静かに言った。

「ん?」
「組長を片手で引き上げられなかっただろ。…昔は軽々と出来たのに、
 俺……やっぱり、まだ、鍛えたり無かったのかな…」

ぺんこうの呟きに、くまはちとまさちんは、目が点になる。

「……ぺんこう……」
「ん?」
「……忘れてへんか?」
「何を?」
「組長の……成長…。昔って、いつと比べてるんや?」

くまはちの言葉に、ぺんこうは、暫し考え込んだ。そして、気が付いたのか、ハッとした表情になった。

「そっか……そうやんな…」
「……俺よりも、ぺんこうの方が、本調子ちゃうやん」

まさちんが、ボソッと呟いた。
その途端、妙な音が車内に響く。

「…痛ぇ〜っ。ぺんこう、てめぇ…っ!!」

ぺんこうが、まさちんの後頭部をぶん殴ったらしい。それには、まさちんが怒りを露わにする。
車が蛇行した。

「こるぅぅぅぅぅらぁぁあぁ、まさちんっ! ハンドルから手を離すなっ!」
「うるせぇっ!」
「なんやとぉ……てめぇ…」

今度は、くまはちの怒りが……。
くまはちの手は、ぺんこうとまさちんの襟首をそれぞれ掴み上げていた。

「せめて、家に着くまで、大人しくせぇや…」
「……すみません……」

ぺんこうとまさちんは、同時に口にした。
その途端………。





真子が泊まる部屋。
真北は、真子の手を握りしめていた。真子の左腕には、人の手形にあざが残っていた。
ぺんこうが、必死に掴んでいた場所。
真北は、そのあざに、そっと触れ、あの時を思い出していた。


我を忘れるほどだった。

まさちんと言い争っていた時、真北は、ふと、何かに気が付いた。

「健、くまはちとえいぞうは?」
「えっ?」
「さっきまで、居ったやろが。どこや?」
「あっ、いや……その……」

健は、しどろもどろになってしまう。
そういう時は、決まっていた。
真北に内緒で動いているのを隠しているということ。
はっきりと『知らない』と言えば、済むはずなのに、なぜ、内緒だと言うことを知らせるような口調になるのか。

ぺんこうの強引さに負ける。
くまはちの怒りには触れたくない。
更には、えいぞうには逆らえない。

その三人の思いを知っているからこそ、それぞれの行動に賛成するのだが、その三人よりも更に怖い男…それは、真北であり、健にとっては、真北の怒りにだけは触れたくないのもあるからこそ、わざと、そう振る舞うのだった。

「あいつら………!!! …まさちん、真子ちゃんの場所、探れっ」
「言われなくても、解りますよっ!」

そう怒鳴った途端、まさちんは、走り出した。
真北も走り出す。
その二人を追いかけるように、健も走り出した。
人混みが途切れ、広大な場所へとやって来る。
そこには、四人の男が、柵に乗り出し、下を覗き込んでいた。
男達に気付いた真北は、その男達が突然、真後ろにぶっ倒れるのを目の当たりにする。
えいぞうとくまはちが、四人の男に目にも留まらぬ速さで、攻撃したらしい。

手加減しとけよ…。

そう思った時だった。
えいぞうが、柵の向こうに身を乗り出して、何かを叫んでいた。そして、柵の間に両手を入れ、何かを掴み、引き上げようとし始めた。

『組長、耐えてください』

聞き慣れた声が耳に飛び込んだ。
その途端、真北は我を忘れてしまう。
柵を乗り越えて……。



真子のあざに触れた右手の平を、真北は見つめた。
少し赤くなっていた。

「……痛めた?」

真子の声だった。

「真子ちゃん!」
「大丈夫?」

真子が目を開け、真北の右手を見つめていた。

「大丈夫ですよ。少し赤くなっただけですから」
「……ぺんこうは?」

部屋には、真北しか居ないことに気付き、そっと尋ねた。

「帰りましたよ」
「ぺんこうの左手…」
「くまはちにお願いしてますよ」
「…それなら、大丈夫だよね。…ありがとう」
「痛みませんか?」

真子の左腕を気にする真北の表情は、本当に心配げで……。
真子は、にっこり微笑み、

「痛くないよ!」

元気よく応えた。

「……無茶しないこと」

真北が、少し怒った口調で言うと、

「ごめんなさい…反省してます」

真子は恐縮そうに応える。それに安心したのか、真北は優しく微笑んで、真子の頭をそっと撫でた。

「…くまはち…無事に帰ったのかな…」

真子が呟く。

「さぁ、それは、解りませんね…」

惚けたように、真北が応えた。

「今頃は、高速を降りたころでしょう」
「そんなに、寝てたの???」

真子が急に起き上がる。

「もうすぐ、夕暮れですよ」

真子は、窓に目をやった。確かに、夕日で、空が赤く染まっていた。

「真北さん」
「はい」
「……治ったの?」
「何が…でしょう?」
「その……高所恐怖症」
「……あの時は、我を忘れていましたから…」

照れたように応える真北を観て、真子は、帰りのロープウェイの様子が、手に取るように解ってしまった。思わず笑い出す、真子。

「笑わないでください……」
「ごめんなさい〜」

真子と真北は、微笑み合う。
和やかな雰囲気が、部屋中を漂っていた。

そんな真子と真北とは違い、異様なオーラに包まれているのは……。

「ぺんこう、帰りは自分で運転しろや」
「そうするわ。これ以上、こいつに運転させたら、タイヤがすり減るっ」
「だったら、お前が運転しろ」

ぺんこうの言葉に、まさちんが怒り任せに言う。

「ぺんこうが運転したら、ぺんこうの家から歩くことになるやろが」

くまはちが応えた。

「自宅まで送ってもらったら、ええやろが」
「まさちんが居って、送るようなやつかよっ!」
「…くまはちぃ、日頃、俺のこと、そう思ってるのかぁぁぁっ!!」

ぺんこうの怒りが……。

「あっ、いや、その……」

珍しく、焦るくまはちに、まさちんとぺんこうは、笑い出してしまった。

「……っ!! 笑うなぁあっ!」

固く冷たい音が短く、車内に聞こえた。





「ねぇ、真北さん」

真子が呼ぶ。

「はい」
「あと二日…休暇だよね」
「えぇ。その予定ですから」
「それなら、私も……いいのかな…」
「いいですよ」
「………真北さん……いいの?」

真子が首をちょっぴり傾げて、尋ねてくる。
それには、真北は弱い。

「ぺんこうからの伝言でもありますからねぇ」
「伝言??」
「休日を堪能してください」
「………ぺんこう…大丈夫なのかな……」
「大丈夫でしょう」
「あと二日って、学校…」
「担任と保護者が、そう言ってるのに?」

真北の言葉に、真子は驚いた表情をみせた。

「気にしない、気にしない」

何かを誤魔化すかのように、そう言いながら、カーテンを閉める真北。真子は、優しく真北を見つめていた。




夕食を終えた真子と真北は、部屋にある露天風呂で湯に浸かっていた。
まるで恋人のように寄り添い、露天風呂から見えるライトアップされた紅葉を眺めていた。

「風情ですね」
「風情だね…」

二人は同時に呟き、そして、微笑み合う。

「明日、何しますか?」
「猫グッズの店に行きたいなぁ」
「…買い忘れたものでも、ございましたか?」
「うん」
「あれだけ、購入したのに?」
「うん」
「それなら、店を丸ごと購入しましょうか!」
「うん」
「………真子ちゃん…」
「…冗談だよぉ〜もぉ」

真子は、真北の肩に頭突きをする。

「真子ちゃぁん〜」

真北はふくれっ面になった。
その頬を突く真子。
真北の口から、頬に貯まった空気が漏れる。それが、あまりにも可笑しかったのか、真子は大笑いしてしまう。

「そんなに笑うことないでしょぉ!」
「おもろいもぉん」
「もぉ〜」

真北は、真子の肩に手を回し、自分に引き寄せた。

「あまり、心配掛けないでくださいね…真子ちゃん」

真北が、そっと呟く。

「…うん……ありがとう、真北さん」

真子の声が、真北の胸元で響いた。




次の日、真子と真北は、猫グッズの店へとやって来た。
なんと、先日来たときとは別の商品が、陳列していた。

「真子ちゃん、もしかして…」
「店員さんに教えてもらったの。今日…新商品が入るって!
 ねっ!」
「はい! お待ちしておりましたよぉ!」

いつの間にか、店員と仲良くなっている真子に驚きながら、真北は懐を気にしていた。
先日購入した時から、財布の中身は増えてないだけに…。

まさちんから取り上げとけば良かった…。

「お客さん、どれにしますか?」
「えっとね…」

真子の嬉しそうな声に、真北は諦めた表情をして、真子と店員のやり取りを、優しく見守っていた。






あいにくの雨が降る朝。
真子と真北が泊まる旅館の前に、一台の車が到着した。
従業員達に見送られて旅館から出てきた真子と真北は、その車に乗り込んだ。

「ありがとな」

真北は運転手に声を掛けた。

「いえ。予定通りでしたので」

運転手は、そう応えて、アクセルを踏んだ。
車が旅館から離れていく。そして、温泉街を通り過ぎ、山道へとやって来た。

「一部は予定じゃなかったけどなぁ」
「も、申し訳御座いませんでした! その…」
「まさか、泣き落としをするとは、俺も驚いたって」
「本当に、申し訳御座いませんでした」

運転手が、深々と頭を下げる。

「ぺんこうには、負けるって。ねっ! 本堂さん」
「はぁ、まぁ……」

苦笑いで誤魔化す運転手・本堂は、ルームミラーで真北の表情を確認する。
怒っている……。
慌てて目を反らす本堂だった。

「真子さん、楽しまれましたか?」
「うん。楽しかったよぉ。初日は、驚いたけど、その後は、ずっと
 紅葉を楽しんだ。…まさか、まさちんたちが来るとは思わなかったけど、
 みんなが揃ったら、更に賑やかになって、楽しさが倍増したぁ。
 今度、本堂さんも休暇を取って、紅葉を満喫してくださいね!」
「ありがとうございます。しかし、暫くは休暇は、取れませんから」
「…真北さん…厳しいもんねぇ」
「いいえ、その……今年の休暇は使い切りました」
「そうなの?????」

驚いたように言う真子に、本堂は、ルームミラー越しに微笑み、

「はい」

優しく応えた。

「あっ、そうだ!」

そう言って、真子は膝の上に置いている紙袋を助手席に置いた。

「これ、みなさんに」
「みなさん??」
「その……初日に一緒にいた方々にも……。その……
 事情を知らずに、私……ほら……ごめんなさい…」

真子が言いたいことは解る。
お詫びとして、お土産を用意した。

「真子さん、お気になさらずに。あいつらは、元気ですから」
「真北さんの無茶なお願いに付き合ったお礼もあるけど…」

真子は、ちらりと真北に目をやった。
あらぬ方向を観ている真北。それには、思わず笑いそうになる真子と本堂だった。

「もらっとけ」

真北が短く言うと、

「ありがとうございます」

本堂は、元気よく返事をした。

「紅葉、素敵だったよぉ」

真子は、語り続ける。
本堂は、真北を気にしながら、真子の話に耳を傾けていた。
真北は、外を眺めてるフリをしていた。

真子ちゃん…元気を取り戻して、良かった。
しかし、あの買い物……これだったのか…。

真北は、目だけを助手席に向けた。
猫グッズの店の紙袋。
真子が、誰のために購入したのか、気にしていた。
まさちんたちへのお土産は、部屋で手渡ししていた。
理子とむかいんへは、鞄の中に大切にしまいこんだのを見ていた。
他に誰が…。

まさか、こいつらにも気を遣うとは…。
良いのか、悪いのか…。

世間的には、敵同士。
真子の周りの男達は、敵対心丸出しなのに、真子は、全くそういう素振りを見せていない。

それが…真子ちゃんだもんなぁ。

笑みがこぼれそうになり、真北は、慌てて眉間にしわを寄せる。
車は、高速の入り口を通りすぎ、スピードを上げながら、本線へと合流した。
それでも、真子の話は続いていた。
続いて……!!

「こら、真子ちゃん! その話は駄目っ!」
「いいやんかぁ。みんな知ってるんやろぉ」
「それでも、駄目!!」
「話すもぉん。それでね、本堂さん!」

真北が止めても真子は本堂に語り出す。

あの…真子さん〜。後で怒られるのは、俺ですから…。

本堂の背中を、冷たい汗が流れていった。





落ち葉舞い散る季節が過ぎ、そして、一面が真っ白になる、冬が来る。
真子の姿は、天地山にあった。
真子は、いつもの部屋で受験勉強中。
ふと、外が気になった。
そっと立ち上がり、クローゼットを開け、スキーウェアに着替えると、足を忍ばせて部屋を出て行った。


真子の部屋の隣では、まさちんが外を眺めてのんびりと過ごしていた。
ふと、何かが気になったのか、真子の部屋へ通じる扉をノックする。

「組長」

返事が無い。

「組長」

それでも返事が無い為、まさちんは、ドアを開けた。

「…………居ない……」

まさちんは、急いで部屋を出て、ロビーへと向かっていく。

勉強しかしないと約束したのになぁ…もぉぉっ!!!

真子は既にゲレンデで楽しんでいた。
真子を追いかけるまさちん。その二人を支配人室から眺めている、まさは、いつもと変わらない二人に安心して、優しく微笑んでいた。

気にすること…御座いませんよ、真北さん。

真北から先に連絡を受けていた。

真子ちゃんが心配だから。

真北は真子の何を心配しているのか。
まさにだけは、こっそりと打ち明けることが多い真子。それとなく、真子の思いを聞き出して欲しいとも、依頼されていた。
でも、それは、二の次、三の次。
今は、自分も和みたい。
一番忙しい時期だとしても、真子と過ごす時間だけは、大切にしたい。

自分が一番楽しみにしている時期でもあるから…。

真子が、窓際に立つまさに気付き、下から手を振っていた。
まさは手を振り返し、

戻る時間ですよ。

と、腕時計の位置を指さして、合図する。
真子はふくれっ面になりながらも、ゲレンデから戻っていく。

さぁてと。

まさ、行動開始!

まぁ、その前に、秋の一騒動を聞いておかないとねぇ。

まさは楽しみにしているような表情で、真子が戻るのを待っていた。



(2007.5.24 UP/ 改訂版2017.3.12)



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※この物語は、どちゃん!オリジナルのものです。著作権はどちゃん!にあります。
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※物語は、架空の物語です。物語内の登場人物名、場所、組織等は、実在のものとは全く関係ありません。
※物語内には、過激な表現や残酷な表現、大人の世界の表現があります。
 現実と架空の区別が付かない方、世間一般常識を間違って解釈している方、そして、
 人の痛みがわからない方は、申し訳御座いませんが、お引き取り下さいませ。
※尚、物語で主流となっているような組織団体を支持するものではありません。



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